"大至急！4,500万円を受け取って下さい！"
という何やら香ばしいタイトルのメールが届きました。
私の知り合いで、そんな大金を受け取ってくれだなんて言い出す様な性格の良い富裕層は居ませんので、何事かと。
大至急という事なので早速本文を読んでみます。
差出人は、つい最近ご主人を癌で亡くされたと言う未亡人の美沙子さん(59歳)。多分私は面識が無い方ですが…。
なんでも…ご主人は美紗子さんには内緒で株式投資でとんでもない額の巨万の富を築いていたそうで、それをそのまま美紗子さんが相続してしまうと相続税だけでとんでもない額を国に持って行かれてしまう事となり、それではご主人に対してあまりにも申し訳ないので、もし迷惑でなければ私にご主人の資産のほんの一部ではあるが、4,500万円ほど受け取って貰えれば…と言った趣旨の内容でした。
それは大変だしお気の毒だし、見ず知らずの私に対して色々と打ち明けて下さる美紗子さんは、きっと悪い人ではないと確信。なにか私にお手伝いできる事でもあれば、という思いで返信してみました。
私：
「ご主人様におかれましてはお悔やみ申し上げます。私が4,500万円を受け取る事で美紗子さんのお役に立てるのであればお手伝いする事自体はやぶさかでは無いですが、受取人としては私以外にご親族などはいらっしゃらないのでしょうか？」
と疑問に思った事を書いて返信。
10分もしないうちに、早速美紗子さんから返信あり。
このレスポンスの速さからも十分、相当お困りであることが窺い知れます。きっと1分1秒も早く、4,500万円を処理してしまいたいお気持ちなんでしょうね…お気の毒です。
美紗子さん：
「主人も私も天涯孤独の身ですし、子宝にも恵まれず…。もし迷惑でなければ、公正証書を作る為の代行費用と印紙代の8万円だけ先に以下振込先に振り込んで頂ければ、大至急819TMMさんの口座に4,500万円を振り込みます。」
と、今後の具体的な事務処理の流れについてもご丁寧にご説明頂きました。
天涯孤独の身なのに、大切なご主人も亡くされて、更にご主人が残してくれた資産を国に持って行かれてしまう状況とは、さも落ち込んでらっしゃるのではと、とても気の毒に思い、私の方も真摯に向き合い、返信しました。
私：
「公正証書作成代行費用および印紙代として8万円が必要な旨、承知致しました。美紗子さんもお急ぎのご様子ですので、公正証書については先行して作成処理を進めて頂ければと思います。その費用については、私が8万円を振り込んで、その振込確認が取れるまでには最低でも1営業日はかかってしまいますので、まずは美紗子さんの方で建て替えておいて頂き、4,500万円から8万円を差し引き、残りの4,492万円を私の口座に振り込んで頂ければと思いますが、いかがでしょうか？勿論、振り込み手数料は私持ちで構いません。」
と、和久井映見ばりにピュアさを全開にして提案してみました。
美紗子さん：
「819TMMさんは立派な方ですので決して疑う訳ではありませんが、見ず知らずの方にいきなりそんな大金を振り込む訳には行きませんし、担当の顧問弁護士にも叱られてしまいます！とにかく時間が無いので急いでください！」
と美紗子さんに叱られてしまいました。私の配慮が足りなかった様です。
私：
「不躾なご提案をしてしまった様で、大変申し訳ございませんでした。ところで美紗子さんも今おっしゃっていた様に、何故見ず知らずの私なんかに、4,500万円もの大金の受取りをご依頼されたのか、それこそご担当の顧問弁護士さんから叱られてしまうかと思いますが、何故ピンポイントで私にご依頼頂いたのか、教えて頂けますでしょうか？」
と丁寧に畳み掛けていきます。
美紗子さん：
「あなた本当に不躾な人ですね！せっかく4,500万円差し上げると申し上げているというのに！あなたみたいな理屈っぽい事を並べ立てる人は異性から嫌われますよ！」
という美紗子さんの捨て台詞が、思いの外、私のハートにクリティカルヒット。
ザックリ心を抉られてしまい、心が折れてしまいました。美紗子さんはお気の毒ではありますが、メールのやり取りはここで終了させて頂きました…。
それにしてもなぜ、会った事も無く、たった数回のメールのラリーしかしていない美紗子さんに、私のモテなさ加減が察知されてしまったのか…。
不躾な提案がいけなかったのでしょうね、こちらは気を遣ったつもりで振り込み手数料はこちらで持つと提案したんですけど、そんな所を気にしてしまう小っさい男だと思われてしまったのかも知れませんし、他にもいかにもモテないオーラを醸し出していたのかも知れません。
何より、せっかく4,492万円を受け取れる夢の様なチャンスも棒にしてしまって、とても残念です。
まぁでも、くよくよしても始まらないですし、そもそも美紗子さんも傷心されている中での話な訳ですから、ここは両者痛み分けということで、気分を入れ替えて…
"佐々木希のマネージャーです。150万円差し上げるので今夜一晩だけ佐々木希と一緒に過ごして頂けませんか？"
という佐々木希さんのマネージャーさんからの、何やら訳ありなメールに返信してみようかなぁと思います。
佐々木希さんもここ数年間で色々とご心労も絶えないでしょうし、何かお悩みになられているのでしょうし、少しでもお役に立てれば良いのですが。
それでは皆さんごきげんよう。
